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イガラシイッセイです。無口の反動は日記に表れます。
by polisan
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CHOP-ME-NOT DIARY
それでもタブラを叩くのです。
昨日土曜日にタブラのレッスンに行ったら、師匠に「顔とか雰囲気は出てるのに出す音が小さい」という趣旨の指摘を受けました。練習をさぼり過ぎて指が動かなかったのが原因だと思い、レッスン後に多摩川で自主練習をしました。

それでもタブラを叩くのです。_d0018714_2317966.jpg


風は強かったものの、日差しが暖かくて気持ちよかったです。

周囲には、思い思いに休日の午後の平和なひと時を過ごす、幸せな人々が座ったり横になったりして川を眺めていました。私のタブラの音は小さいのでほとんど注目されることはなかったのですが、唯一アメリカ人っぽい青年二人組がチラチラとこちらを振り返っていました。(上の写真の二人)


は、話しかけてきたらどうしよう……


一言目はなんて聞かれるだろうか。「What are you playing?」だろうか。そしたら「Tabla.」って答えればいいのか。いや2個で1セットなので「Tablas.」とか複数形にした方がいいんだろうか。そもそも全然違う質問だったらどうしよう。ああどうしよう。

などと不純なことを考えていたら、間違えてばかりでうまく叩けませんでした。

そのうち青年二人のうち、一人が立ち上がりました。来るか……と内心ドキドキしていると、こっちではなく遠くの方向に歩いていき、ギターを掻き鳴らす青年に話しかけていました。遠目で眺める限り、ギターを借りて弾いて歌ったりして、とても盛り上がっていました。


私は力強くタブラを叩き続けました。



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本日日曜日は、周りの知り合いがタイフェスティバルやらデザインフェスタやら何やらのイベントに出かけたりしているのをTwitterで眺めてから携帯電話を閉じ、昨日と同じく多摩川でタブラを叩きました。

同じように暖かく、同じように人々は幸せそうでした。

昨日からずっと叩いていたおかげでタブラの腕は数年前の水準には戻せたような気がします。しかし当時できなかったことは今もできず、何も進歩していないことに落胆しきりでした。

苦手なパターンを黙々と練習していると、突然横から「すみません、これ、何すか?」と話しかけられました。見ると若い無精ヒゲの男が立っていました。

戸惑いながらも「タブラです。インドの太鼓です」と答えると、彼は「へえー」と言って横に座りました。彼曰く、ワークショップの課題で映像を撮りに来たところ、彼の班だけカメラが壊れて何もできないということでした。「他の人はどうしているんですか?」と尋ねると、「さあ、飯でも食べに行ったんじゃないですかね」と笑いました。

それ以降は特に話すこともなく、とりあえず簡単なフレーズを叩いてみたりしました。しかし彼はあまり関心を示しませんでした。仕方がないので自分の練習を続けることにしました。二人ともただ川の方を眺め、半分は相手を意識しながら、半分は自分の世界にいたように思います。

数分経った頃、彼の仲間が使えるカメラが見つかったと呼びに来て、彼は挨拶もそこそこに去って行きました。日差しは徐々に弱くなり、風が冷たくなってきました。

彼がいなくなった後は、練習しても少しも上達の兆しが見えなかったので早々に帰途につきました。

それでもタブラを叩くのです。_d0018714_034618.jpg



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貴重な土日をタブラの練習に費やし、その練習中に思っていたことは、自分はなんでタブラを叩いているんだろうということでした。若者に「なんでこの楽器をやろうと思ったんですか?」と訊かれ、「音が好きだからですね」と答えました。それは嘘ではありませんが、練習する動機として本当に正しいのか?という違和感がありました。

タブラを含めたインド音楽は、輪廻転生のようなインド哲学の複雑な理論で成り立っており、インド音楽を極めることの最大の目標は「神(ブラフマン)に近付くこと」と聞いています。宇宙の真理と一体化する、と言い換えてもいいかもしれません。しかし自分がそれを目指しているかというとそんなこともなく、もしそれが潜在意識として先にあったとしても「観客」という立場でも同じ目標に到達することはできるのです(梵我一如の考え方から演奏者と観客も最終的に一体化する)。わざわざ苦労して超絶技巧太鼓を習得しようというからには、何か理由があるに違いないのです。

人前で演奏したいのか。それを生業にしたいのか。叩いていることがただ楽しいのか。昔聞いたすごい演奏を自分でできたらいいなという願望か。比較的近いのは最後かもしれません。タブラの巨匠のように演奏できたら気持ちいいだろうなあ。という。もしかするとその演奏にブラフマンの片鱗を感じたのかもしれません(だったらいいな)。
by polisan | 2010-05-17 01:13 | 日記
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